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・昔伊集院光が自身のラジオ番組(深夜の馬鹿力2000/04/24放送)内において、ブルース・ウィリスが日本語吹き替えで出演するラジオCMに対して "そんなのもう、何でも言わせられるじゃないですか"、"てーい、スピルバーグですたーい、DVD買ってる〜?
みたいなそういうのでも全然大丈夫だし"などと言っていましたが、まさかTV番組にそれを応用させる制作会社が現れるとは…。Natureにまでこの事件を取り上げられ、世界中の研究者に恥をさらしているかと思うとかなり情けない気がしてきます。
・さて、本日は"On Food Cooking: The Science and Lore of the
Kitchen"という一般にも非常に有名な食品科学本(実は今取っているクラスの教科書でもあったり)の著者としても知られ、現在NY Times等にもコラムを持っているHarold
McGee(ハロルド・マギー)氏が学校でセミナーを行うと聞き、NPBの授業をスキップして出席してきました。結果本物の食品科学の一端に触れる貴重な一時間に。
・イントロダクション、"1984年に私が本を出版した当時、食品科学と言えば白衣を着た連中が得体の知れない食べ物を食卓へと送り込むようなイメージでしたが、第2版を出すことになった2004年にはそんなイメージは吹っ飛んでいて、例えばこの人物が連想される単語となりました"との氏の言葉と同時にスクリーンに表示されたのは、あのel bulliのFerran
Adria(フェラン・アドリア)。ここから、科学的アプローチで誕生した料理のイノヴェーションについての楽しい講義が始まりました。自分への備忘録も兼ねてその一部を以下に挙げておきます。
・サイエンスからの料理へのアプローチ、というテーマで簡単な食品科学の歴史を紹介。
・たとえば、1680年に蒸気機関の発明者であるDenis
Papin(ドニ・パパン)によって圧力鍋が誕生した話とか、1969年にOxford大の有名な物理学者Nicholas Kurti(ニコラス・クルティ)が
"我々は金星の大気の温度をも計れるというのに、スフレの中で何が起きてるかについては何も知らない、これは不幸なことだ"
とスフレの研究に打ち込んだ話、自身による銅製のボウルで卵を泡立てるとより泡が安定するのは何故か、と言う研究がNatureに載ったという話などなど。
・そして、21世紀の分野 "Molecular
Gastronomy(分子美食学)"の代表例の話題に。ちなみにこの言葉を作ったのも前述のN.クルティ。やはりこの分野で最も有名なのはF.アドリアでしょう。以前TBSの番組で雨宮元アナがel
bulliの取材をしてるのを見てうらやましく思ったものです。写真を見ないと全く面白くないので、是非リンクを踏んでご覧下さい。
・まずはF.アドリアのこの有名な写真で手に持っている謎の泡について。この泡の正体は大豆レシチンとキャロットジュースを混ぜたもの。
・そしてラヴィオリに対する不満
"ラヴィオリの内側には食材が詰まっていて美味しい、外側にはソースがあって美味しい、でもその外と中を分けるラヴィオリ自体には味がない"への解法、"ゼラチン
+ 寒天 + 好きな液体"の組み合わせによる薄いフィルム。好きな液体、の部分は何でもいいのでコンソメ等で味をつけられます。応用してパスタにするとこんな一品に。
・リンク先の10品目、メロン味の人造キャヴィア。メロンジュースにアルギン酸を添加し、CaCl2溶液にくぐらすことで出来ます。キャヴィアの食感でメロン味と言う未知の体験に。誰にでも作れるので今度やってみようかな、と言う気も。
・続いてNYのwd-50のシェフ、Wylie Dufresne(ワイリー・デュフレスヌ)の"目玉焼き"(リンク先の目玉焼きにしか見えない写真参照)。黄身はニンジンのジェル、白身はココナッツなんだとか。リンク先の写真の中では、タピオカマルトデキストリンでオリーヴオイルを包む事によって生まれたオリーブオイルの風味がするパウダーを使用した、"tomato
sorbet, Olive oil powder, toast"、t-グルタミナーゼという酵素を利用することによって実現したエビ100%の麺
"shrimp noodles, smoked yogurt, sweet paprika,
nori "等も紹介されました。
・世界一のレストランの名声をも手に入れたイギリスのFat Duckのシェフ、Heston
Blumenthal(ヘストン・ブルメンタール)の作品も。お客を料理に引き込む為の一品目として考案された"Nitro-Palate
Cleanser"。緑茶と卵白を混ぜたものを液体窒素に漬して作るシャーベット(?)です。食べると口内が凄い勢いでリフレッシュされるのと、凄い勢いで口と鼻から煙が出るので爆笑必至なのだとか。もう一つはオレンジとビートのゼリー(リンク先3段目一番左の写真参照)。実は色と味が逆になっているのです。仕掛けは単純、ブラッディオレンジを使って赤いゼリーを作り、ゴールデンビートでオレンジ色のゼリーに仕立てただけ。とにかくゲストの予測を裏切りたいのだとか。
・el bulliと同じカタルーニャの新星El Celler de Can Rocaを仕切るJoan Roca(ジョアン・ロカ)は牡蠣の地球添えなるものを発表。これは本当に森の中から土を拾ってきて、そこから真空蒸留でエッセンスを抽出してゼリーに仕上げたものを添えています。なんでも森林の新鮮な空気のような味なんだとか。もう想像すら出来ません。
・ジョアン・ロカの弟Jordi(ジョルディ)は真っ白なチョコレート、パッションフルーツ、コーヒーの粉末を作り出し、またアイソモルト(パラチニット)を使用したマッシュルームのアイスクリーム(リンク先一番下から4番目の写真参照)も発表。ご丁寧にスモークの香り付けが内包されており、切り開くとマッシュルームのグリルのような香りが広がるように仕掛けてあるのだとか。
・F.アドリアの弟子でワシントンDCを中心にレストランを構えるJose Andres(ホセ・アンドレス)は"分解された白ワイン"なんてメニューを考案。ソムリエがとある白ワインを表現する際に使った食材を組み合わせて一つのゼリーにしてみた、と言う一品です。
・再びスペインに戻り、若手シェフQuique Dacosta(キケ・ダコスタ)の話題に。この人物はビルバオのグッゲンハイム美術館を牡蠣で再現するという大技を発表。見た目のインパクトはこれが一番凄いかも。美術館の外装と同じ材料であるチタンを使用し、アガヴェの抽出物と組み合わせて牡蠣を包んでる模様。
・今度はよりサイエンスな分野から一般的な料理の世界へと広まったアイテムの話。例えば保温用のウォーターバスや、真空調理器など。
・最後に料理からサイエンスに歩み寄るパターンも。58℃と言う低温でも時間をかければ硬いショート・リブをやわらかく調理できることを証明した例など。また、前述のH.ブルメンタールが
"トマトのコンカッセを作る際にトマトの中心部を使用しない"という考えに疑問を抱き、University of
Readingの科学者と組んでトマトのどの部分にうまみ成分が多く含まれるかの研究を始めたという話も。現段階では、種とその周りの部分に多くうまみ成分が含まれているとのデータ出ているとの事。
・そんなこんなで食品科学のフィールドは今まで以上に幅広い可能性が拓かれようとしており、次に全く新しいイノヴェーションを導き出すのは貴方かもしれない、と言った感じで締め。非常に興味深い内容で、時間がとても短く感じられた夕刻となりました。今後色々な実験をする際、料理に応用できないか考えてしまいそうです。
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